断崖のアイ
 そうして2人はイタリアの田舎町に到着する。

 ヴァチカンの領土を取り囲んでいるイタリア共和国に踏み入る彼に青年は唖然としたが『灯台もと暗し』というように案外、見つからないものなのかも……とその後ろをついていく。

 ふと、彼がホテルの前で立ち止まった。軽く何かを確認したあと、ホテルに入っていくので青年も怪訝に思いながら後を追う。

 ごくありふれた小さなホテルだが、ホテルマンたちのきびきびした動きに青年はこのホテルの良さを感じた。

「ようこそ」

 フロントにいる栗毛の女性がベリルに笑顔を見せる。

「2~3日頼めるか」

「ご予約はしていらっしゃいますか?」

「いいや」

「お名前をお願いします」

「ベリル・レジデント」

 その名にぴくりと反応した。
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