断崖のアイ


「!」

 道路に向かってコーヒーを傾けていたユーリの目に、見覚えのある人影がガラス越しに映る。

「あれは……」

 足早に外に出たが、どうやら見失ってしまったらしい。気のせいだったかとも思い、ホテルに戻ろうとした視界に再びその影が映し出された。

「!」

 やはり間違いじゃない! 青年はその背中を駆け足で追った。

 かなり距離があったせいか、なかなか追いつけず自然公園の中に足を踏み入れる。小さな湖と整えられた並木道は、真上をとうに過ぎた太陽の陽差しを温かく受けて閑散とした風景を美しく彩っていた。
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