風花
「遅れてごめんっ」
清谷さんが息を切らせて小走りしてきた。
『そんなに急がなくていいのに(笑)』
8歳も年上の先輩なのに小走りする清谷さんの姿が可愛くみえて、つい笑ってしまった。
「綾部も来れたら良かったのになぁ」
綾部からの電話から1時間後、私達は、綾部の大好物の焼き肉屋で肉をほおばっていた。
『本当!せっかく個室で予約したのに。』
「いやぁ~。旨い!」
満面の笑み。かわいい。
まるで少年のよう。
清谷さんは今年で35歳。
5年前に結婚して今年4歳になる男の子が1人。
独身時代は随分遊んでいたが、結婚してすっかり変わった。
飲みに行っても必ず門限には帰るし、マメに奥さんに連絡している。
子供の幼稚園の入学式には会社を休む。
私の父親は、家事・育児は全て母親に任せきりな人だったので、清谷さんの家族は理想だった。