カセットテープ
翌日の昼。
今日は土曜日。
晴司の声が録音されているカセットテープを聞く日だった。
部屋の窓から眺めれる景色をボーッと、窓枠に肘をついてキョウはあてもなく見ていた。服装はタンクトップにジーンズとラフな格好をしている。
外は太陽の燦々と照りつける日射しに、秋が早く来てほしいと思いたくなるほどである。
窓から太陽の日射しを浴びた風がキョウに緩やかに吹き付けた。黒い髪がそれによって靡く。
前髪が目に少しかかったけど、それも気にならないほどキョウの顔は、うわの空だった。
キョウはカセットテープについてずっと朝から考えていた。
何故だかわからないがカセットテープを聞けば、もう後戻りが出来ない所まで行くことになるかもしれないと、漠然と思っていた。それが自分にとってはプラスかマイナスなのかはわからない。今までの自分が何か変わってしまいそうで、カセットテープを再生することを躊躇っていた。
かといって、そういう思いを抱きながらも亡くなった晴司が最後に残したメッセージを聞かない訳にもいかなかった。
そんな二律背反する思いがキョウをうわの空の状態にしていたのだった。
キョウは逡巡しながらのそのそと再生機器まで来て、胡坐を掻いた。カセットテープはすでにセットしてある。
暫らく睨めっこするように黙って見ていたが、意を決したのか再生ボタンに人差し指を掛けて、押した。
ズーズーとノイズ音が流れてきて、すぐに晴司の声が耳に入ってくる。
――やあ、キョウ。今聞いてるということは初めての土曜日が来たんだね――
晴司は生きていた頃と同じような優しい口調で言った。
――僕が前に言ったこと覚えてるよね? 三ヶ月の間、僕が録音しておいたカセットテープを聞くことだよ――
何が楽しいのか、カセットテープ越しの晴司の声は楽しそうに笑っていた。
――じゃあ第一回目の指示を出したいと思います。それは、僕の彼女に会ってほしいんだ。彼女の名前は森下海恋。彼女にもカセットテープを送っていて、別に指示を出してるんだよ。明日始まりの公園ってのが僕の家の近くにあるよね、そこに一時に来て彼女と会ってほしいんだ。あと、彼女の言いだした事を尊重してあげてよ。じゃあ、ここまでで停止ボタン押してよ――
ここでキョウは停止ボタンを押したのだった。
今日は土曜日。
晴司の声が録音されているカセットテープを聞く日だった。
部屋の窓から眺めれる景色をボーッと、窓枠に肘をついてキョウはあてもなく見ていた。服装はタンクトップにジーンズとラフな格好をしている。
外は太陽の燦々と照りつける日射しに、秋が早く来てほしいと思いたくなるほどである。
窓から太陽の日射しを浴びた風がキョウに緩やかに吹き付けた。黒い髪がそれによって靡く。
前髪が目に少しかかったけど、それも気にならないほどキョウの顔は、うわの空だった。
キョウはカセットテープについてずっと朝から考えていた。
何故だかわからないがカセットテープを聞けば、もう後戻りが出来ない所まで行くことになるかもしれないと、漠然と思っていた。それが自分にとってはプラスかマイナスなのかはわからない。今までの自分が何か変わってしまいそうで、カセットテープを再生することを躊躇っていた。
かといって、そういう思いを抱きながらも亡くなった晴司が最後に残したメッセージを聞かない訳にもいかなかった。
そんな二律背反する思いがキョウをうわの空の状態にしていたのだった。
キョウは逡巡しながらのそのそと再生機器まで来て、胡坐を掻いた。カセットテープはすでにセットしてある。
暫らく睨めっこするように黙って見ていたが、意を決したのか再生ボタンに人差し指を掛けて、押した。
ズーズーとノイズ音が流れてきて、すぐに晴司の声が耳に入ってくる。
――やあ、キョウ。今聞いてるということは初めての土曜日が来たんだね――
晴司は生きていた頃と同じような優しい口調で言った。
――僕が前に言ったこと覚えてるよね? 三ヶ月の間、僕が録音しておいたカセットテープを聞くことだよ――
何が楽しいのか、カセットテープ越しの晴司の声は楽しそうに笑っていた。
――じゃあ第一回目の指示を出したいと思います。それは、僕の彼女に会ってほしいんだ。彼女の名前は森下海恋。彼女にもカセットテープを送っていて、別に指示を出してるんだよ。明日始まりの公園ってのが僕の家の近くにあるよね、そこに一時に来て彼女と会ってほしいんだ。あと、彼女の言いだした事を尊重してあげてよ。じゃあ、ここまでで停止ボタン押してよ――
ここでキョウは停止ボタンを押したのだった。