‐Children‐
理由は解らないがあの理事長が見つけて来た娘だ
『普通』の少女だと考えるのは逆に難しい
「お前、保護者は?」
天城は気分を変えるためにもタバコに火を付けながら問うと、少女はやはり淡々と語った
「両親は居ません。ずっと孤児院にいました」
「……そうか」
余りにさらりと言われたので返す言葉が数拍遅れた
しかし、だからかと納得もする
あの年若い理事長といえど勝手に人ひとりを転校させる事が容易に出来たのは、その子にそれを止める保護者が居なかったからだ
孤児院育ちならば都合が良かったのだろう
流星学園には寮もある
生活に困ることは無いのだから、孤児院側の了解を得るのは簡単だ
ていよく追い出したとも言えなくもないが、昴は知ってか知らずか平静としている
その黒目がちな瞳からは諦めも失望も感じられない
一つため息を吐いて、天城は学園の説明をすることにした
「お前さんも不憫だが、あの理事長に目を付けられたなら元の生活に戻るのは難しいと思うんだな」
昴はどこか眠たげに淡々と頷いた