‐Children‐



《俺達は無理強いはしてない。ここを出て行く覚悟のある奴だけ連れていく》


恭介は内心ショックを受ける
『覚悟のある奴だけ』
それはつまり、脱走の話をこの施設にいるレストチルドレンの大多数が知っていたということだ

しかし、恭介は知らなかった

部屋に来たエカテリーナの事を思い出す
彼女はこの事を知っていたのではないだろうか?

彼女は止められないと知っていても、きっと自分に止めて欲しかったのではないか?


《時間がない。最後に聞く。俺達と来るか?》


ビクターの問いに、恭介は乾いた声を絞りだした



《……俺は……行けない!》



時が止まったようだった
けれど、動き出す
動き出さなければならなかった


《なら……俺達は行く》


施設の方が騒がしくなる
それに気付いたビクターは合図を送る


ビクター、ルース、ベッキーは苦汁を滲ませて背を向けた






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