彼女はきっと振り向かない
「話すって何?」
七尾の家を出て、少し歩くと空き地がある。そこのベンチに二人で腰掛け、俺は沈黙を破った。
「あの二人、付き合ってるんだよね?」
「さあ?」
「誤魔化したって無駄だよ。あたし、聞いてたの、さっきの会話」
「どんな会話?」
とぼける俺にイラっとしたのだろう。彼女は声を荒げた。
「だから!廉くんが妬いてるとか!そういう話!」
「ああ、それが?ただの冗談だろ」
「冗談…?」
「なんで俺に聞くわけ?本人たちに聞けばいいだろ」
自分でも思ったより冷たい言い方をしてしまっていた。
気づいたときには彼女は泣いていた。