彼女はきっと振り向かない
「響には真面目に感謝してんだよ。俺の素を知ってる唯一の人間だろ」
「そういうの良いから、自分のこと考えろって」
苦しくなる。
七尾が見てるのは、廉なんだ。
そういや、俺がかわいいと思った子って大体廉が好きなんだよなー。
なかなか不毛ですよ。
今まで廉と比べられなかったかっていうと嘘になる。
だからといって気にしたことはなかった。
「本気」じゃなかったから、誰に対しても。
でも、今は違う。
明るくて元気なくせに、泣き虫で強がりで必死に廉を追いかける彼女から目が離せない。
委員長は廉の本性を知って、廉を嫌いになるだろうか。
本性っていっても、ただ感情が分かりやすくなるだけで、廉の優しいところや勉強・スポーツができるところは変わらない。
だから、きっと委員長も分かってくれるはず。
委員長、頼むから廉のこと、捕まえててよ。
きっと何かが壊れていく、そんな予感がした。