恋模様2
「まっ、健太!ダメよ。お兄さんだって用事があるんだから」
さ、行くわよと無理に車椅子を押す母親の手を掴み、止めた
「いえ、大丈夫です。俺、暇なんで!!」
−このお兄さんと話がしたい−
スケッチブックには健太君の真っすぐな言葉が書かれていた
「で、でも…これから買い物に…」
「それじゃあ、買い物に行っている間、俺が健太君を見ています。俺からもお願いします」
母親は首を傾げていた。不思議に思うのは当たり前、俺がどこの誰で、どんな人か分からないのだ
「どうして、そこまで健太と話がしたいんです?」
どうして?
「………俺にも分かりません。ただ、」
車椅子に乗っている健太君の頭を撫でた
「健太君と話がしたい、それだけです」
同じ痛みを持つ健太君と話がしたい、本当にそれだけのことだった
母親はふっ、と小さく息を吐き、車椅子に掛けてあるかばんを持った
「健太が自分からお願いをするのは、久しぶりね…。敦君でしたっけ?」
「は、はい」
緊張する。怒られるか、ひっぱたかれるか、それとも…