恋模様2
そう、俺たちはあの日誓ったんだ。もう悔やまず、爽の回復を祈ると…
−でも、僕と出会わなければ、爽お姉さんが怪我をすることはなかったんだよ−
健太君は、字を書く手を止め、俯いていた
あぁ、これはいつしかの俺だ…
爽という、太陽を無くし闇の中をさ迷い歩いていた俺の姿に…
仕事を止め、ただ悲しみや後悔に明け暮れていた、俺に…
「健太君には、夢はある?」
突然のことで、健太君は驚いているようだ
「はは、そんな顔しないでよ。普通に答えればいいんだよ」
健太君は迷いながら、スケッチブックに書き込んだ
−しょうぼうし−
「消防士か。カッコイイね、健太君ならなれるんじゃないかな」
俺は、そっと健太君の頭に手を置いた
「でもね、消防士はみんなを助ける仕事でしょ?今の健太君はみんなを救えるかな?」
健太君が何も言えなくなることを知っていて、俺は少し意地悪な質問をした。健太君は口をきつく結んだまま開かない
「消防士はね、勇気が必要だと思うんだ。どんなことがあっても踏み出す勇気を…。こんな俺が言えることではないんだけどね」
しばらくたって、健太君が俺の裾を引っ張った。スケッチブックには、健太君の心が書かれていた
−ぼくは、どうしたらいい?−
その問いは、俺が求めている答えと同じような気がした。答えはすぐそこにあるものなのに…