恋模様2
恋空−コイソラ−
「ありがとうございました」
健太君の母親が帰ってくる頃には、健太君は泣き止んでいた
その顔は腫れぼったかったけれど、目は輝きを取り戻していた
健太君の母親は、健太君の顔を見て驚いたようだ。しかし、1番驚いたのは、健太君の顔が明るいことだった
「健太っ…いま、笑ってっ…」
健太君の母親は、俺に感謝しながら泣いていた
「いえ、俺じゃないですよ。健太君の勇気です」
健太君の母親は、「え?」というような顔していた
「それでは、俺は行きます」
そういって、2人に背中を向け歩き出した。しかし、次の瞬間−
「ありがとう」
その声は俺の声でもなく、健太の母親の声でもなく…
「健太っ、あなた……」
「ありがとう、お兄ちゃん!!」
その声は掠れていたが、間違いなく健太の声だった
俺は嬉しくなって後ろを振り返ると、そこには、温かい家族があった
俺は2人の笑顔を邪魔をしないように、静かにその場を去った