恋模様2



「ギリギリ間に合った…」





会場はすでに照明が落とされ、ステージのみが照らされていた





「全くよぉ…。ネクタイ結びにてこずってるなんてよ…」





「はははは。まぁ、いいじゃんか。間に合ったんだしね」





敦を左右に振りながら、軽く笑った。その顔に少し、緊張があった





俺は敦と比べ、こういった場所には慣れていた。若社長なのだから、と言えばみんな首を縦にふるだろう





「そういえば、日村さんは?来るって言ってなかったっけ?」





敦が辺りをキョロキョロしながら、円香を捜していた。しかし、ステージから僅かにこぼれた光だけでは、捜すことは難しかったらしい。いるはずもないのに…





「あぁ、円香なら来ねぇよ」





「えっ、どうして?」





どうしてって…





−敦君だけには言わないで−

円香の言葉を思い出す





「円香のやつ、腹痛いんだって。たぶん、食い過ぎなんだろ。あいつ最近、食欲すげぇから」





−爽が…−





「ふーん、そうなんだ」





−今日が山なことを−










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