黒猫にご注意を
サクロは1つの部屋の扉を開け、私も中に入れる。白を基調とした部屋。少しだけ顔が歪む。ほんの少しだけ、ほんの少しだけ歪められたのだ。
無意識に………。
「さぁ!時雨。その服脱いでくれる?」
その服、と指さされ後ずさる。人前で脱ぐ、そんな度胸なんてない。サクロは私の反応を見て
「あぁ、私はあっち向いとくから、綺麗にしようね。」
サクロは逆の方を向き、タンスの中を物色し始めた。
おそらく、自分の服なのだろう。慣れた手つきであれやこれやと出していく。
そんなサクロを見ながら服を脱いでいく。そして、ふと手を止める。
___どこまで脱げばいいのか。
あとは、ブラウスとスカートだけなのだがこれは脱げと言われても脱ぐことはできない。
戸惑っているとサクロが服を差し出してきた。
「コレ!絶対に合うと思う!!・・・でもその前に。」
私を洗面台のようなところへ連れて行き、顔を濡らしたタオルでごしごしと拭く。
「・・っサ・・クロ・・痛い・・・」
「我慢よ。あとちょっとだから。」
顔、首と汚れが目立っている箇所を拭いていき、満足げな顔で見つめられる。
――陶器のように白い肌。それとは対照的な黒い髪。
――儚く、散ってしまいそうな印象を受けるのはこのせいなのかしら。
けれど、それだけではない。時雨から放たれる雰囲気というのか。儚さと哀しさが混じっており、目を逸らせば一瞬で消えてしまいそうな。