黒猫にご注意を


立ち止まっていた足を動かそうとしたその時、


「ミャア」


足元から聞こえたなんとも可愛らしい鳴き声にしゃがみ、足にじゃれてきた猫に触れる。
喉を撫でてやるとゴロゴロと喉をならし嬉しそうに目を細める。


不意に雲に隠れていた月が顔をだし、猫を照らす。


「黒猫?」


艶やかな毛は月の光を浴びて淡く光る。真っ黒なけれども美しい色彩を持っていた。


「ミャア」


まるで私の問いに応えるかのように鳴く。
黒猫を引き寄せるとそのまま抱き締めた。


__あぁ、温かい・・・



そう思った瞬間だった。


「ミャア!!」


と黒猫がひと鳴きすれば、猫の瞳が月色に輝いた。と思えば・・・






「あー、すまない」


低く、心地よい声が耳に入る。


「・・・・!!」


驚きのあまり目を見開いた。




そこには自分に抱き締められている見ず知らずの男が居たからだ。とっさに離れようと男の肩を押すがびくともしない。それどころか、腕を捕まれて今度は男に抱き締められているカタチになった。


「離れるな」


耳元で放たれた、自分とは違う音に心臓が高鳴る。



「ーーーーっはなし!!!」


男を投げ飛ばそうと程よいくらい筋肉がついた腕を持った瞬間だった。



眩いばかりの光が私と男を包み込んだ。



「ーーーなっ!」


眩いばかりの光にやられ、意識を手放した。けれど倒れないのは男が抱き締められているから。男は私を見て、


「すまない・・・」


哀しそうに顔を歪めた。





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