黒猫にご注意を
瞳の中の闇に気づいたのかは定かではないが、
「ここは時雨、お前の住んでいた世界とは違う。ここは・・・ウィット。海の上だ。」
黒猫は私の膝に飛び乗りまるまる。ちょっと驚きすぐに頬を緩まし、そして黒猫に問う。
「・・・ウィット?」
「この国の名前だ。他にも、スカンジナビア、ルージュアクロ、ディオールの4大陸がある。」
「すか・・・?」
いきなり色んな名前を言われてもわかるはずがない。
アークは優しく言った。
「まぁゆっくり覚えていくと良い。」
「・・・」
そもそも自分はどうやってこの世界に来たんだろう。
自分がどうやって来たかを思い出そうとする。
__アークを抱き締めた瞬間にアークが人になって・・・
「・・・アークって人に戻るの?」
「・・・あぁ。ちょっと俺を抱き締めてくれ」
アークの言う通りに抱き締めた。
次の瞬間月色の光がアークを包み込んだ。あまりの眩しさに目を閉じてしまった。
先程までの柔らかな毛並みとは違い、硬く、ゴツゴツした大きな感触に変わり目をあけると、
「・・・・アーク?」
自分が先程まで抱き締めていた黒猫とはうって変わり自分と2つ3つしか変わらないであろう歳の男が自分の腕の中にいた。
「・・・あぁ。」
流れるような黒髪に月色の瞳。
スッと通った鼻筋、ちょっとつり目で、唇は少し薄い。
__美男子だ。
私はアークを見た瞬間そう思った。否、彼の顔を見れば誰でもそう思うだろう。
世の中の女がほっとくはずがない顔である。
余り、興味はないけれど
「俺は、月明かりに照らされる夜かお前に抱き締めて・・・貰わないと元には戻れないんだ。」
「・・・お前ってあたしだけ?」
アークの言葉に違和感を覚え、すぐに問う。悩むのは時間の無駄だ。