白狐の書
──クラクションの音が甲高く響き渡る。
鼓膜が破れそうなほど、うるさい。
──体に衝撃が走る。
車が、俺にぶち当たった感覚だと気付くまでに、五秒かかった。
──宙に浮いた体が、地面に叩き付けられる。
口の中に、血の味が充満した。
……死ぬ、マジで……。
体に、じんわりと痛みが広がっていく。
後頭部から、大量に出血しているのだろう。生温かい液体が、俺の首筋を通る。
「……睡……」
睡のために買ったネックレスの箱が、なぜかまだ手の中にある。
あれだけの衝撃を受けてなお、しっかりと握られていた。