白狐の書


 「なんだ、本当は話せるじゃないか」

 「ゲホッ……無理、してんだろうがっ……コホ」





 ゴポリ、と血の塊が口から吐き出される。

 喉から、ヒューヒューと北風のような音が鳴っているあたり、もうそこまで死期が近付いているらしい。

 苦しさも忘れるほど身体中が痛むが、女は、そんなことはお構い無しに、俺の頬に触れる。

 ひんやりと冷たく、痛みを癒すようで、落ち着く。

 心地よさに、思わず瞼を閉じてしまう。

 睡魔が、急激に襲ってきた。それでも、瞼を開けようとは思わない。

 その行為が、どれだけ死を早めるかを知っているのに。


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