白狐の書
「眠りたいのか?」
「あぁ……」
「死んでしまうぞ?」
「……あぁ……」
「生きなくていいのか?大事そうに持っているそれは、誰かに贈るものではないのか?」
そうだ。……プレゼント、睡にやるはずだったのに……。
薄らに瞼を開ける。視界に入るのは、綺麗な女の顔だけだ。
しかし、もう、そんなことに気を回している余裕も、時間も残されてはいなかった。
霞む視界と、薄れる意識。どちらも、俺に「死」の距離を知らせている。