白狐の書


 「そうか。ならば、さっそく血をもらおう」





 願った瞬間に、女は、俺の首筋にかぶりついた。

 今更、いくら痛みが増えたところで構いはしないが、さすがに首筋は痛い。

 というか、確実に動脈に何かが突き刺さっている。

 恐らくは、二本の歯だろうと思われるが、それにしても長い。

 普通の八重歯ならば、きっと、どんなに頑張っても動脈までは到達できない。

 それどころか、皮膚を傷付けることも安易ではないはずだ。

 しかし、女の歯は、随分と深く俺の首筋に食い込んでいる。

 まるで、肉食獣に噛まれているような気分だ。


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