白狐の書


 悪意を感じるわけでもないのに、妙に癪に障るというか、燗に障るというか。

 女じゃなきゃ、命の恩人という事実をなげうって、顔面に一発お見舞いしてやっていたことだろう。

 綺麗な顔だ。壊しがいがある。





 などと、とてつもなく黒いことを考えていると、白い奴は、やんわりと笑みを浮かべた。

 冷めた瞳が、細まる。

 どこまでも澄んでいて、綺麗な金色の瞳は、俺を捕らえて放さない。





 不覚にも、ドキリとしてしまったことは、言うまでもない。


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