白狐の書
「好きに呼べ。元来、名前など持ち合わせていない」
「マジで?」
「あったのかもしれないが、忘れた。こう見えても、そろそろ万歳も近いからな」
「……マジで!?」
み、見えねぇ!
女の若作りってのは、ここまでくるとただの詐欺だな、おい。
「おい、何か今、不謹慎極まりないことを考えなかったか?」
「か、考えてませんっ」
「……そうか」
冷めた瞳が俺を射抜く。
あまりにも鋭い目付きに、心の中が透視されているような錯覚すら覚える。
そして、俺は気を紛らわすように咳払いをしてから、会話の続きを促した。