白狐の書
白い狐から連想するものを、次々に思い浮かべていくが、どれも名前には繋がらない。
十秒唸ってみたが、考えは全くまとまらず、俺は小窓から見える空を見た。
──綺麗に澄み渡った空だ。
雲一つない。というか、雲はどこかしらで停止したままなのだろう。
よく街の景色を見てみれば、止まりっぱなしの風景は、随分と異様なものだった。
──飛び立つ前の雀に、黄色のままの信号機、転ぶ一歩手前の子供。
時間が止まるとは恐ろしいことなのだと、生まれて初めて体験した瞬間だった。