白狐の書


 「……やらないぞ」





 俺の視線を感じ、更には俺の心情も少なからず読み取れたのだろう白狐様は、白狐の書を強く抱き締め、そう言い放った。

 どうやら、俺の目は卑しい光を放っていたらしい。





 そりゃそうだろ。神様の書物に近いもんだろ、あれ。

 ……めちゃくちゃ欲しい。





 「だから、やらないぞ。大体、私以外はこれを使えないしな。お前が持っていても無意味だ」

 「……ならいらねぇー」

 「お前……人間の中の人間というか……大分、駄目人間だな」

 「うるせぇな。人間なんて、そんなもんだろ。その本があったら、なんでも願い事とか叶いそうだし」

 「?……なんでも?……何を勘違いしているんだ?」

 「勘違いって?」





 訝しむような顔をしながら、狐は俺を見つめる。

 キョトンとした顔をしていれば、まだ可愛らしい。





 ……ずっとそんな顔してりゃいいのに。


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