白狐の書


 神妙な面持ちで話す狐を見ながら、俺は溜め息を吐いた。





 マジで神様とかいたんだな。

 ……さっき嫌味言ったぞ。俺、絶対地獄行きだな。





 車に轢かれ、神様への冒涜の言葉を吐いた時のことを、今更後悔してみる。

 まぁ、しかし。と、俺は今一度、真っ白な狐を見やった。





 俺からすっと、こいつの方が神様みてぇなもんなんだよな。

 命の恩人ってやつだし。





 人間というものは、随分と単純にできている。

 一度命を助けられれば、助けてくれた相手が、神々しい神にも見えるのだ。

 大分……厳禁である。


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