白狐の書


 「わ、私の誕生日?あれ?そうだったっけ?」





 睡は、台所にある小さなカレンダーを確認しながら、独り言を呟く。

 どうにも、日付感覚が狂っていたらしい。

 分からなくもないが、そこまで日付感覚に乏しいと、違う場面で苦労しそうだ。

 主に仕事とかで。





 「へぇ……一年って早いのね。私、もう二十三歳になっちゃったの?」





 まだ若いってのに、なんで歳とることに抵抗があるみたいな顔すんだよ。

 早く老けるぞ。





 という本音は置いてきぼりにして、俺は台所にいる睡を見た。





 「プレゼント、なんか欲しいもんとかねぇーの?」

 「ないわよ?」





 即答。

 あまりにも早すぎる即答に、俺は溜め息をこぼした。





 なんて欲のない二十代だ。


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