白狐の書


 毎年のことながら、俺は睡の誕生日に、睡の欲のなさを思い知らされる。

 毎年、毎年、同じ言葉ばかりが繰り返されているのだ。

 「プレゼントは?」と訊けば、「いらないわ」と答える。

 「欲しいもんは?」と訊けば、「ないわね」と答える。

 完璧すぎる睡に、少々怯えすら感じてしまう。

 人間とは、ここまで欲を抑えて生きていける生き物だったのだろうか。





 「蓮が毎日元気でいてくれたら、それでいいのよ」





 なんて言葉を、昨年と同じく、次の瞬間には口にしているのだから、これはもう、どうしようもない。





 ……さて、今日はプレゼント探しの旅だな。


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