白狐の書
──正直、人混みは好きじゃない。というか、嫌いだ。
「……はぁ……」
自分でも気付かないうちに、溜め息がこぼれていた。
しかし、ざわざわと騒がしい雑音達のせいで、その溜め息の声は掻き消される。
睡の誕生日プレゼントを探しに来たのはいいものの、睡の欲しいものなど、分かるはずもない。
結果、ふらふらと人混みを分け入っているだけの状態だ。
五時までには帰りてぇな。……睡が心配するだろうし。
現在時刻、一時。
後四時間で、睡の誕生日プレゼントは見つかるだろうか。