あなたたちは私の宝物
帰りの車の中でフミさんが言った

『私たち、今のところシングルマザーだね』

『ねぇ、フミさん。聞いてもいいのかな?』

『えぇ。私は前の夫と離婚してまだ半年も
経ってないから入籍出来ないのよ。
出産までには出来る予定なんだけどね』

『そうだったんだ。私はね、母さんがまだ
反対してて、入籍にはまだ親の承諾が必要で
入籍出来ないんだよ。だから出産までに
入籍出来るかもまだわからないんだ』

『そうだったんだね。まだまだ不安だらけ
だろうけど、きっとお母さんも賛成して
くれる日が来るはず』

『そうだといいけど』

『大丈夫よ』

フミさんが大丈夫だと言ってくれると
何だか本当に大丈夫なんじゃないかって
思えてくる

何でもいい方にいきそう

フミさんは今は無理でも出産までに
入籍出来る確実な予定があった

羨ましかった

その日マサが帰ってから母親学級の話をした

マサは疲れていても私の話を聞いてくれた

『アキが楽しかったならそれで良かったよ』

そう言って笑っていた

『赤ちゃんの名前とか考えてくれてるの?』

『うん、だいたいは決まってるんだけど
まだ秘密にしておくよ』

『どうして?』

『俺は男だと思っているんだけど
もしも女だったら、また名前
考え直さなきゃいけなくなるから、今は秘密』

『そっか、わかった』
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