世界一長い10メートル


死んだのだ。誰か。


きっと女性が大切に想っていた誰かが。




10メートル先に屈むその女性の口が動いているのに気が付いた。




声が聞きたいな。



女性のゆるいウェーブのかかった髪を揺らす風も


10メートル声を運ぶことらなかった。




近づこう。ハンカチを渡すんだ。



そう思っても、何故か近づけなかった。







< 25 / 28 >

この作品をシェア

pagetop