私の依頼主さん。
「すみません」

『どうした?』


がっちりした体型で、脂性の顔。

30代も半ばの指導員、宗田さんはジロリと私を見た。


「手荒れが酷いので、ハンドクリームを借りに来ました」

『あぁ。
お前の立っている左の棚の中にあるから、持ってこい』

「…ありがとうございます」


心臓の音が少し早くなった気がした。

私は棚からハンドクリームを取りだし、宗田さんの前に持っていった。


『手を出せ』

「……はい」


宗田さんの前に手を差し出すと、彼はにやつきながら私の手を取った。

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