私の依頼主さん。
『お客様、こちら、非売品でして……』

「いくらなら譲る?」


そう言ってあの人に近付く男性は、長身で、スラッとした体型、涼しげな容姿の人だった。

私を見て、すごく優しく笑った。


『いや、値段はつける価値もまだないくらいで…』

「私には、価値ある人だと思うから。
ねぇ、いくら?」


いきなりの対応に、宗田さんはたじたじだった。


『……では、言い値で売りましょう』


渋々…と言ったように、宗田さんは依頼主に言った。


「ありがとう。
ねぇ、名前を教えてくれない?」


その人は宗田さんにお礼を言った後、私に向かって微笑みながら言った。


「…中山 千秋です」

「お、ちゃーちるだね(笑)」

「……」

「ちゃーちる、いくらがいい?」

「え……?」


いきなり聞かれて、私は間抜けなくらい小さな声が出た。

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