私の依頼主さん。
「なんでですか…?」


私は疑問を口にした。

わからない。

能力が長けているわけでもない。
容姿が良いわけでもない。
まして、今は包帯を巻いて傷だらけなのに。

そんな私を見て、彼は優しく笑った。


「貯金を使ってでも、助けたかったんだ。
いや、君が欲しかったって言った方が気兼ねしないかな?(笑)」


依頼主さんが本当にサラッというから。

挨拶みたいに普通に言うから。

私は泣きそうになった。


「ありがとう、ございました」


鼻がツンとしたけど、私は今までで一番丁寧にお辞儀した。

何をされてもいい。

この人の為に、私は生きようと思った。


「気にしないでよ。
ただ買っただけだから(笑)」


私のお礼さえも、彼は涼しく受け流した。

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