私の依頼主さん。

返品しますか

助手席に乗せようとした依頼主さんを、丁重にお断りして私は後ろに乗る。


「ちゃーちる」

「はい」

「その丁寧語、やめない?」

「いえ、それはできません」


フロントミラーで私を見る彼は、少し困ったように眉間にシワを寄せる。


「…帰ったら、俺絶対笑われるじゃん」

「……」

「ま、少しずつ慣れようね」

「…はい」


そんな会話をしながら、依頼主さんの家に着いた。


普通にでかい。

多分お金持ちの豪邸よりは小さいんだろうけど、世間の平均よりは大きい家だった。


『おかえりな……さい』


依頼主さんの母親だと思う女性が、私を見つけて唖然とした。

私はすぐ、頭を下げた。


「ただいま」


そんな彼は、気にもせずに笑って私の腰に手を回す。


「まだフラフラだから、支えてもいいかな?」

「……すみません」


私は申し訳ない気持ちのまま、頭を上げた。

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