私の依頼主さん。
『秘書養成所に行くだけだと言ったでしょう?!
なのに、貯金全額使って買ってきて、しかも選んだのがこの子だなんて……』

「母さん」


お母様の話を遮った依頼主さんの声は、宗田さんを黙らせた時と同じ、低い声だった。


「俺は後悔してないよ。
まだちゃーちるの技術はわからないけど、自分で貯めたんだから、好きに使わせてもらう」


依頼主さんのお母様を見る目がとても優しくて、お母様も口を閉じた。

私は彼の腕を優しく払った。

そして、地面に正座する。


「申し訳ございません。
返品させていただきます」


言葉を言い終えて、私は頭を下げた。
いわゆる、土下座。

――本当にごめんなさい。

私の言葉に、お母様が目を見開いた。

でも。


「…させないよ」


私の腕を引っ張り、依頼主さんは私を立たせた。
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