私の依頼主さん。
家の中を一通り案内されて、最後に依頼主さんの部屋に着いた。

10畳くらいの広い部屋だった。

彼は私の腰からやっと手を離した。


「ここが俺の部屋。
部屋は、その、一緒でも大丈夫?
空いてる部屋、あるんだけど…」


頭を触りながら、依頼主さんは恥ずかしそうに言った。

…可愛い癖。


「大丈夫です。
私は依頼主さんの希望に任せます」


そう伝えたら、依頼主さんは少し嬉しそうに笑ってくれた。

……寂しいのかな。

少しだけ、彼の心境を見た気がした。


「荷物は、このスペースに置いて……」


それから、説明を諸々聞いて一段落。


「ねぇ」

「はい」


声を掛けられて、依頼主さんを見ると少し不満そうな顔をしている。
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