私の依頼主さん。
第一章

またですか…

カタカタとキーボードを叩く音が、部屋中に響く。


「あと1分」


野太い声が聞こえて、私は焦りを感じた。


この部屋には、パソコンが40台。

それが1人ひとつ。


「ストップ」


その声と同時に、キーボードの音が止んだ。

カツン、カツン。

あの人が歩く音しか聞こえない。

私の心臓は騒がしい。

そして、足音が私の後ろで止まった。


「おい」

「…はい」


声をかけられ、諦めたように返事をした。

また、ですか。


「中川、何文字打ち込んだ」

「…15010文字です」

「よし。
15009文字以下の奴、隣の部屋に行け」


その声で立ち上がった人は、半数より多かった。


「…さぼるな」


耳元で言われた後、背中に鈍い痛みを感じた。

また鈍器で殴られて、私の背中にはアザが増えたのを感じた。


< 3 / 40 >

この作品をシェア

pagetop