私の依頼主さん。
「じゃあ、お金の話をしようか」


お金の事を考えてたの、依頼主さんにわかってしまったのかな。

タイミングばっちりな話に私は小さく頷いた。


「一応俺も社会人だから給料は払えるけど、正直多くはあげられない。
理由があってあんな所にいたんだろうから、たくさん払ってあげたいだけど……」

「…はい」


そんな事気にしなくていいのに……。

依頼主さんが少し悲しそうな顔をしたから、私もつられて悲しくなる。

私は、助けてくれた事だけで満足している。

今は一人でいなくても良い。

殴られる心配も、今はない。


それだけで、嬉しい。


「…やっぱり、返品しようか」

「……え?」


急に冷たい表情になって、依頼主さんは言った。

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