私の依頼主さん。
「私、依頼主様に大変感謝しております。

私は、養成所で人生で初めて孤独を味わいました。
初めて身体中アザだらけになるまで殴られました。

頼れる人もおらず、1年間耐える日々の中で、今日依頼主様に会いました。

あの依頼主様の声が、私にどれだけ響いたか、ご理解いただけるでしょうか。

私、技術は半人前、笑い方も泣き方も忘れてしまいました。

無表情で伝わるものなどなにもないとは思います。

しかし、今日私は本当に救われました。

確かに私は借金返済という、理由もちでございます。
依頼主様にとって、邪魔者でしかないかもしれません。

それでも、私は今日の恩を返したいと思っております。
先程お母様に言っていただいた事、私にはお金より価値ある事だと感じます。

高い金額をいただける方より、一生涯、依頼主様の元で働きたい所存でございます。

私を返品するお気持ち、変わりませんか?」


そう伝えて、私は顔を上げた。
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