私の依頼主さん。
周りを気にして手を抜くと、さっきのように鈍器で体を殴られる。

私は小さく「すみません」と謝った。


食事の時間になり、指導員がいなくなる。

そして、隣の部屋にいた人達が戻ってきた。

途端に部屋中にぎやかになる。


『あーきつかった』

『体もたないし…』


愚痴をもらす女の子から、目線を外した。


――ごめんなさい。


『ねぇ』


ショートヘアの女の子が、私に向かって棘のある声を投げ掛ける。


「…はい」

『早く用意してくれない?』

「はい…」


私はいつも通りに、部屋の隅に置いてある全員分の食事を配り始めた。


『遅い』

『早くしなさいよ』


女の子達の罵声を浴びながら、食事を配る事にももう慣れた。


私は、完全に1人だった。

< 6 / 40 >

この作品をシェア

pagetop