向こう。そして。
「…凪はそれでも平気かもしれないけど……
俺は嫌だ。
二週間もまともに凪に触れられないなんて、耐えられる訳ない。」

「ぅ……こ、子供みたいなこと言うんじゃない!
お前も少しは勉強しろっ!」

聴いている方が恥ずかしくなる言葉にうろたえ気味になりつつ、軽く舞瀬の二の腕を叩く。
少し顔が熱い。

「勉強はしても良いけど、何か自分の得になる気がしないんだよな…
あ、じゃあ、こうしようぜ。」

「っ…何だよ?」

嬉しそうな笑みを見て、俺は嫌な感じがした。
察するのがあまり得意ではない俺でも、これは的中した。

「勉強するから、何か御褒美くれよ。
俺が凪よりも良い点を一教科でも取れたら、凪を一日中好きにする権利をくれる、とか。」

「はぁっ?
何だそれは!
やるわけないだろう!」

「でも普通に勉強するだけじゃやる気出ないし。
凪も競争相手いた方がやりがいがあるだろ?」

「それは、そうかもしれないが…」

確かに一人で黙々と勉強し続けるのは、少しだけ辛いものがある。
それを分かったように、舞瀬は更に挑発するような言葉を投げかけた。

「それとも何?
俺に負けると思ってるのか?
学年トップであろうお方が。」

「ぐっ…」

見透かした目を向けられた瞬間、俺は不覚にも対抗意識を芽生えさせてしまった。

「分かったよっ、やってやる!
お前なんかに俺は負けないからな!
一教科だって俺よりも良い点なんか取らせてやらん!
競うからには、テストまで一緒に帰らないぞ。」

その言葉を聴いた舞瀬はニヤリと笑った。

「じゃ、決まりな。」


僅かに後悔したときには既にに遅く。

本気を出した舞瀬に、俺は僅差で負けた。

その後、舞瀬にどんなことをされたかは、言うまでもない。
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