異本 殺生石
「俺の苗字は玄野!ゲンノと書いてクロノ。いいかげん覚えろよ、オザキ」
「あたしのだって、オサキ、濁らないって何万回も言ったぞ。お互い様だろ」
それは隣のクラスの玄野了司だった。入学してすぐから妙にウマが合って、長い付き合いの悪友だ。ただし恋愛感情などはお互いにない。
悪友と言っても陽菜とは全く対照的なタイプで、成績は常に学年トップ、弓道部の主将にして品行方正、教師の評判も完璧という、嫌味なぐらい出来た生徒だ。しかし本人にはそういう自覚がまるでなく気取ったところがないので、陽菜も気楽に付き合える。
「それに、その男みたいな言葉なんとかしないのか。陽菜はけっこうルックスいけてるんだから、髪を長くしてもっと女らしくすりゃモテモテだって、これも何万回か言ったぞ」
「はん!流れる黒髪は女の命ってか?あたしゃ、このショートカットが性に合ってんの。だいたい、二次元美少女みたいな長い髪の毛、手入れとか毎日のセットとか、どんだけ手間暇かかるか知ってんのか?あたしゃ、野郎どもの目を楽しませるためだけにそんなエネルギー使うほどヒマじゃねえよ」
軽口をたたきあいながら、二人が人気のない林のそばの道にさしかかった時、その異変は起こった。突然すさまじい風が四方八方から巻き起こり、さすがの陽菜もミニにしている制服のスカートの裾を必死で押さえた。そして周囲の空気がビリビリと震え、目もくらむような閃光が一瞬二人の目を焼いた。
そしてまた突然静けさが辺りに戻り、おそるおそる目を開いた陽菜は思わず手から鞄を地面に落してしまった。隣では玄野が目を見開いてかたまっていた。
今まで何もなかった道のすぐ横の空き地にそれは突然出現した。一面つやのない銀白色で長さ10メートル、直径3メートルぐらいの細長い流線型の物体。片方の、たぶん後部だろう端からは直径数十センチの細いパイプのような物が何本も長く突き出ている。まるで宇宙ロケットのように見えた。まさか、どこかの国の宇宙ロケットが墜落した。
だが、そうでもなさそうだった。その物体の胴体から細い4本の棒が下に向けて伸びて、ふわりと地面に着地したからだ。あっけに取られて立ちつくしている二人の前で、その物体の壁が音もなく開き、中から人間らしい人影が降りてきた。
「あたしのだって、オサキ、濁らないって何万回も言ったぞ。お互い様だろ」
それは隣のクラスの玄野了司だった。入学してすぐから妙にウマが合って、長い付き合いの悪友だ。ただし恋愛感情などはお互いにない。
悪友と言っても陽菜とは全く対照的なタイプで、成績は常に学年トップ、弓道部の主将にして品行方正、教師の評判も完璧という、嫌味なぐらい出来た生徒だ。しかし本人にはそういう自覚がまるでなく気取ったところがないので、陽菜も気楽に付き合える。
「それに、その男みたいな言葉なんとかしないのか。陽菜はけっこうルックスいけてるんだから、髪を長くしてもっと女らしくすりゃモテモテだって、これも何万回か言ったぞ」
「はん!流れる黒髪は女の命ってか?あたしゃ、このショートカットが性に合ってんの。だいたい、二次元美少女みたいな長い髪の毛、手入れとか毎日のセットとか、どんだけ手間暇かかるか知ってんのか?あたしゃ、野郎どもの目を楽しませるためだけにそんなエネルギー使うほどヒマじゃねえよ」
軽口をたたきあいながら、二人が人気のない林のそばの道にさしかかった時、その異変は起こった。突然すさまじい風が四方八方から巻き起こり、さすがの陽菜もミニにしている制服のスカートの裾を必死で押さえた。そして周囲の空気がビリビリと震え、目もくらむような閃光が一瞬二人の目を焼いた。
そしてまた突然静けさが辺りに戻り、おそるおそる目を開いた陽菜は思わず手から鞄を地面に落してしまった。隣では玄野が目を見開いてかたまっていた。
今まで何もなかった道のすぐ横の空き地にそれは突然出現した。一面つやのない銀白色で長さ10メートル、直径3メートルぐらいの細長い流線型の物体。片方の、たぶん後部だろう端からは直径数十センチの細いパイプのような物が何本も長く突き出ている。まるで宇宙ロケットのように見えた。まさか、どこかの国の宇宙ロケットが墜落した。
だが、そうでもなさそうだった。その物体の胴体から細い4本の棒が下に向けて伸びて、ふわりと地面に着地したからだ。あっけに取られて立ちつくしている二人の前で、その物体の壁が音もなく開き、中から人間らしい人影が降りてきた。