異本 殺生石
遠くから「何だ、今の音は?」「あっちの方か?」という近所の大人たちの声が聞こえてきた。二人は考える暇もなく、反射的にその謎の少女を隠さなければと思った。玄野が彼女を背負って、とりあえず陽菜の自宅めがけて走った。陽菜の両親は今朝から親戚の法事で出かけていて明後日まで帰らない。つまり陽菜の家は彼女一人なので、とりあえず陽菜の自宅に少女をかくまう事にした。
少女を二階の陽菜の部屋へ運んでベッドに寝かせ、改めて見るとなんとも不思議な外見の子だった。たぶん陽菜や玄野と同じぐらいの年頃だろう。髪は脱色か染めているのかとも思ったが、そうではなく本当にプラチナブロンドらしい。しかしさっき日本語をしゃべった事から考えても、白人やハーフだとも思えない。それに化粧でここまで肌を白くするのはどう考えても不可能だ。
無我夢中の状態から脱して落ち着いてみたら、陽菜は少女の顔が泥とほこりで汚れているのに気付いた。体からもかなり汗臭い臭いが漂っている。陽菜は玄野に手伝わせて一階のバスルームから、お湯をいっぱいに張った一番大きい洗面器とタオルを運んできた。タオルを湯に浸し、かたく絞って用意が整ったところで、陽菜は横で床に両膝をついて待機している玄野に、氷のような冷たい口調で声をかけた。
「で、ゲンノ。あんたはどうする気なの」
玄野は一瞬ぽかんとした表情で陽菜の顔を見つめた。
「いや、もちろん、手伝うけど?」
陽菜は立ち上がって玄野の目の前に仁王立ちになって続ける。
「ほ、ほう。いい度胸してんな、あんた。女の子の服の下を、どうしても見たいと、そう言ってるわけだな?それも、このあたしの目の前で」
玄野もやっと気付いたようだった。ライオンを目の前にしたウサギか何かのような動作でゆっくり床から立ち上がり、ドアの方に体を向けた。
「あ、あはは、そうだったよな……あの、俺は出てた方が……いいんだよな?」
「当たり前だろ!一階のリビングに行ってろ!」
少女を二階の陽菜の部屋へ運んでベッドに寝かせ、改めて見るとなんとも不思議な外見の子だった。たぶん陽菜や玄野と同じぐらいの年頃だろう。髪は脱色か染めているのかとも思ったが、そうではなく本当にプラチナブロンドらしい。しかしさっき日本語をしゃべった事から考えても、白人やハーフだとも思えない。それに化粧でここまで肌を白くするのはどう考えても不可能だ。
無我夢中の状態から脱して落ち着いてみたら、陽菜は少女の顔が泥とほこりで汚れているのに気付いた。体からもかなり汗臭い臭いが漂っている。陽菜は玄野に手伝わせて一階のバスルームから、お湯をいっぱいに張った一番大きい洗面器とタオルを運んできた。タオルを湯に浸し、かたく絞って用意が整ったところで、陽菜は横で床に両膝をついて待機している玄野に、氷のような冷たい口調で声をかけた。
「で、ゲンノ。あんたはどうする気なの」
玄野は一瞬ぽかんとした表情で陽菜の顔を見つめた。
「いや、もちろん、手伝うけど?」
陽菜は立ち上がって玄野の目の前に仁王立ちになって続ける。
「ほ、ほう。いい度胸してんな、あんた。女の子の服の下を、どうしても見たいと、そう言ってるわけだな?それも、このあたしの目の前で」
玄野もやっと気付いたようだった。ライオンを目の前にしたウサギか何かのような動作でゆっくり床から立ち上がり、ドアの方に体を向けた。
「あ、あはは、そうだったよな……あの、俺は出てた方が……いいんだよな?」
「当たり前だろ!一階のリビングに行ってろ!」