異本 殺生石
フーちゃんの遺骨を入れた壺を抱えて、玄野は軽く陽菜たちに手を振り、北へ向けて歩き始めた。その後ろ姿が段々小さくなっていくのを見つめながら、陽菜は必死で声を押し殺していたが、とうとう耐えきれなくなり、叫ぼうとした。
ゲンノ、やっぱり考え直せ、戻って来い、と。だが、その陽菜の肩を後ろから昭雄の両手が痛いほどがっしりとつかんだ。振り向いた陽菜の目に昭雄が小さく首を横に振ったのが見えた。
陽菜はともすれば裏返ってしまいそうな声を押し殺し、両手を口にあてて代わりにこう叫んだ。
「がんばれよ!ゲンノ!元気でな!」
もう顔の見分けもつかないほど小さくしか見えなくなっていた玄野は、大きく片手を振り、そして森の中の道の角を曲がって完全にその姿は見えなくなった。
陽菜は振り返って昭雄に抱きつき、声を押し殺して泣いた。昭雄も今回は陽菜を引きはがさなかった。
「ええん、兄さん……ゲンノが行っちゃったよう!フーちゃんも、もういない。もう二度と会えない……ああん、ああん!」
陽菜の頭をやさしくなでながら、昭雄は昔小さかった頃の陽菜を、外で男の子と喧嘩したり派手に転んで擦り傷を作って帰って来た陽菜を、泣いていた陽菜をあやしてやった頃の事を思い出していた。
ゲンノ、やっぱり考え直せ、戻って来い、と。だが、その陽菜の肩を後ろから昭雄の両手が痛いほどがっしりとつかんだ。振り向いた陽菜の目に昭雄が小さく首を横に振ったのが見えた。
陽菜はともすれば裏返ってしまいそうな声を押し殺し、両手を口にあてて代わりにこう叫んだ。
「がんばれよ!ゲンノ!元気でな!」
もう顔の見分けもつかないほど小さくしか見えなくなっていた玄野は、大きく片手を振り、そして森の中の道の角を曲がって完全にその姿は見えなくなった。
陽菜は振り返って昭雄に抱きつき、声を押し殺して泣いた。昭雄も今回は陽菜を引きはがさなかった。
「ええん、兄さん……ゲンノが行っちゃったよう!フーちゃんも、もういない。もう二度と会えない……ああん、ああん!」
陽菜の頭をやさしくなでながら、昭雄は昔小さかった頃の陽菜を、外で男の子と喧嘩したり派手に転んで擦り傷を作って帰って来た陽菜を、泣いていた陽菜をあやしてやった頃の事を思い出していた。