ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
壁一面に張り出されているのは、世界各地を写した写真で埋め尽くされていた。純は、その中に一枚のモノクロ写真を見つけた。他の物とはサイズが大きいその中に写っていたのは薄い布を纏ったしのぶだった。

モノトーンのそれは、しのぶの裸体を鮮やかなコントラストで浮かび上がらせている。

「普段は風景写真しか撮らない人なんだけど、彼の口車に乗って、つい撮らせちゃった物よ」

そう言ったしのぶの心は、ここに居ない様に感じられた。彼女の心は何時でもこの写真の撮影者と共に有るとでも言いたげだった。

「――それに……五年は長いわね…流石に待ちくたびれたわ」

しのぶはそう呟きながら後ろで手を組んで、うんと大きく伸びをして見せた。

半ば諦めたとでも言いたげな不思議なちょっと投げやりな表情。
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