ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
「莫迦よね、本当に。自分で自分に呆れてる。散々貢いだ挙句にほったらかし…」

 純はしのぶの瞳から流れ落ちる一筋の涙を見て心が締め付けられた。

彼女はこの迷路の様な草原に取り残されて出られなくなった、哀れな小動物だった。

写真を見詰めるしのぶを、純は後ろから抱き締め彼女の温もりを確かめた。

ほんのりと香るメンソールがしのぶと言う女性が自分の前に本当に居る事を確かめさせてくれた。そしてこの温もりを、何時までも感じて居たいと思った。
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