ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
「――私……私はどうすればいいのかな」

そう言って少し寂しそうな表情で微笑むしのぶの笑顔が純の心に染みて、何故か涙が溢れそうになった。

そうだ、しのぶは、草の迷路で迷子になって出られなくなった小動物なのだ。

なら、そこから出る勇気を持つ必要があるのではないか?

そうで無ければ一生迷路から外の世界に出て行く事は出来ないのではないか。そして、純にはそれが酷くいけない事の様に思えた。

「――しのぶ……しのぶは…ここを離れた方が良いと思う…」

ぽつりぽつりと語る純の言葉を聞いてからしのぶは静かにこう尋ねた。

「わたし……不幸に見えるのかな?」

今度は純がしのぶの顔を見詰めた。

「少なくとも幸せでは無いように見える」
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