ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
純は机に頬杖をついてはあっと溜息をつくと、その時、何となく浮かんだ顔が、しのぶの顔だった。

微笑んでは居ても、何処かに影が有って、心の底から笑った事等一度も無いと言う表情のしのぶ……その、影の部分には今、世界を旅して居ると言う男の姿が見え隠れする。

その男とは、どう言う人物なのだろうか。

自分の恋人を何年も待たせておいて何も思わないのだろうか。

純はそう考えた時、何故自分がそんな事を考えるのか自問自答した。そう、純の心は確実に変わっている。出合いの状況はともかく、純は素直に言えそうな気がした、しのぶの事が好きだと……
< 29 / 89 >

この作品をシェア

pagetop