ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
純の頭の中に浮かぶ言葉はただ一つ、しのぶに合わなければ……だった。まるで何かの呪文でも唱える様にそう呟きながら純は嵐の中、自転車に乗って、しのぶの……草原の迷路の家に向かって走り出した。

台風は天気予報のとおり、純の街を直撃している様で、雨も風も尋常でない強さになりつつ有った。純の心に一つの言葉が浮かぶ『男には負けると分ってても行動しなければならない時が有る』今、まさにその時だと、純は心に中で確信した。

予想通り何時もの私鉄は運休、駅前に人影は無かった。純は線路沿いに自転車を走らせる。嵐は益々酷くなり、まるで純がしのぶの元に行く事を邪魔している様にも感じられた。

草原の迷路は、何時もの様相とは違って猛り狂う魔物の様にも感じられた。純は迷路の入口に自転車を頬り出すと、迷路に向かって足を踏み入れる。まるで、ゲームのラストステージ、自分は高い塔のてっぺんに閉じ込められたお姫様を助ける勇者だ。
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