ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
純は迷路の中、体が持って行かれそうになる程の風に襲われながらも、しのぶの居る家に向かって歩き続ける。

ひょっとしたら、この行為は、はた目から見れば、酷く滑稽ものなのかもしれない。しかし、純には関係無かった。しのぶに合わなけりゃならない、それだけの為に嵐の中歩を進めて居るのだ。

草原が急に開けて目の前にしのぶの家が見て取れた。明かりがついて居ない。純は見通しの効かない周りの様子を改めて見渡した。どうやら、町は停電している様で、遠くの家の灯も見て取る事が出来なかった。

「しのぶ!」

純は玄関に辿り着くと、ドアを激しく叩きながらしのぶの名を呼んだ。

「純!どうしたの」

家の扉は直ぐに開かれてしのぶが姿を現した。
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