ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語

嵐はゆっくりと過ぎ去って行った。それに合わせて月明かりがしのぶのベッドに二人の淡い陰影を蘇らせる。

「しのぶ……しのぶは、これからどうするの…」

「――私……私は、ただ待ち続けるだけ…いつまで待てばいいのかは分からないけどね」

月明かりはしのぶの表情に乱反射して彼女ん表情を一層悲しそうな物に見せた。

「――もし……もし、しのぶが嫌じゃぁ無かったら…僕と…」

口籠る様に呟いた純の唇を自分の唇で優しくふさぎ純の優しくて純粋な瞳を愛おしそうに眺めた。

「――僕と一緒に行かないか？」

その言葉にしのぶは驚いた表情を見せず、神秘的に微笑んで見せた。

「ダメよ、純……」

しのぶにとって、純の言葉は決して迷惑な事では無かった。自分の気持ちも純にゆっくりと引かれ始めて居る事は、無碍に否定出来なかったし、この家の主を待ち続ける事にも少し疲れて居たからだ。